旅夜話

とある好奇心の航跡

ブラジルにて ② ~日本人の印象①~

ブラジルにいます。
今回はブラジル人の日本人に対する印象について書いていきます。

ブラジルには日系人がたくさん住んでいることは、知ってる方も多いと思います。
ですから、ブラジル人もある程度、日本の文化について知識を持っているんだろうな、ぐらいのことは想像しますよね。
まあ、僕はそう思ってました。
しかし、その知識がどういったものなのか、どの程度浸透しているものなのか、そこに関しては見当もつきませんでした。

で、実際来てみると、なるほどこんな感じなんだと、けっこうインパクトがあったので、報告します。

まず、ブラジル国内には日系人が特に多く住んでいる地域というのがあります。 
代表的なのはサンパウロ州パラナ州です。
僕はそういったところをまだ旅していません。
人種別人口構成で日系人の比率が非常に低いところばかりを旅していますので、あくまでそういったところでの感想になります。

とある田舎街に滞在してた時の話です。
そこは豊かな自然に囲まれた風光明媚な場所で、
イタリア系移民の子孫が多く、日系人は住んでいません。日系人だけではなく、アジア系の人間もいません。
夜、一人で飲み屋に行きました。
場末感たっぷりの飲み屋です。
薄暗い店内を親父が一人で切り盛りし、古くて映りの悪くなった東芝のブラウン管テレビがサッカーの試合を流しています。

客はおっさんがほとんどですが、若者も少しいます。全員地元の連中で間違いないでしょう。

そこに僕が入って行ったわけです。

なんだ、こいつ?

まだ何も聞かれてませんが、そんな視線をひしひしと感じます。

これはこれは、アジア人とは珍しい。

そう思ってるんでしょう。
アジア人が飲みに来ること自体、初めてかもしれません。

最初に口火を切ったのは店の親父です。

お前、中国人か?日本人か?

日本人だよ、と答えると親父は急にテンションが上がり、日本てあーだよな、こーだよなと、その素朴な日本観を語ってくれました。
それを以下に箇条書きにしてみます。

1:日本社会は非常に秩序がある。
2:科学技術が発展している。
3:日本人は礼儀正しい。
4:日本人は頭が良い。
5:経済力が世界一位。

5は明らかに間違っていますし、4もどうだろ?って感じですよね。これは多分日本人は勤勉だ、というイメージが先にあって、だから頭が良い、となっているんでしょう。
他のはまあ、当たってると言えば当たってるのかなって感じですかね。
外国人が思う日本のイメージの典型と言ってもいいかもしれません。
初対面の日本人旅行者に披露するには、当たり障りのない日本人観とも言えそうです。
まあ、親父は店の主人ですからね。
客商売。気も使えます。

ですが、客となるとまた話は違うでしょう。
僕が生粋の日本人だと分かると、この珍客をもてなすべく、老いも若きも興味の色を全面に出しながら近づいてきました。
そして彼らなりのやり方で僕との友情を育もうとしてくれたわけですが、その際、やはり話のつかみは、日本てあーだよな、こーだよなということになります。
そこで示された、彼らの忌憚のない日本観を抜粋し、以下に箇条書きにしますのでご覧ください。

1:目が細い
2:ち○こ小さい
3:女は胸が小さい
4:働き過ぎで全く遊ばない
5:国の面積が小さい
6:家が小さい
7:自然災害が多い
8:犬を食う
9:サソリを食う
10:ジャッキーチェンすごい
以上です。

いかがでしょうか。

ちなみにこれ、けっこうバカにした感じで言ってきてます。
僕はもちろんむかつきました。
初対面ですからね。
一番ノリノリで言ってくるおっさんを本気で殴ろうと思いました。
が、しかし、それぞれの人間の顔を見ていると、ここで怒ったところで意味が無いような気になってきました。
どうもこれくらいの失礼さは許容範囲だと皆が思ってるようだったんです。
こりゃ、だいぶ感覚が違うのかもな…。
なんというか、ここまで感覚が違うとまともに怒る気にもならんです。

しかしねぇ、1、2、3あたりは身体のことですからね、そんなこと言っちゃいかんだろと思いましたし、8、9、10なんて何なんだ?って感じですよね。

犬は… 韓国とか中国のことと勘違いしてるんだろうなぁ。サソリも、多分中国では食べてたりするんでしょう。 ここで、仕方なしに日本ではそういう食材を食べる習慣はないことを説明しました。
韓国や中国にしたってみんなが食べてるわけじゃないよとも言いました。
それでもなかなか信じないんですよね。
後日分かったんですが、ユーチューブに、中国人だと思われる女性がサソリの串焼きを食べている動画があがってまして、ブラジル人はそれ見て大興奮してるんですよ。
中国人ヤベー!ってなってる。
で、中国人、韓国人、日本人はみんな一緒だと思ってる人が多いですから、当然日本人もサソリ食ってることにされてます。
僕的にはサソリだろうが犬だろうが、他国の食文化を卑下するのは、まず止めたほうがいいと思ってるので、日本人はサソリも犬も食べないよ、中国人とか韓国人は食べるからやばいよね!なんて話には間違っても持っていきたくないですし、そもそも他国の食文化を自国の価値観を基準にして一方的にバカにすることがいかに良くないことなのか、というのを、こんこんと1時間は説明してやりたかったんですが、そこまで説明できるポルトガル能力もないので、なかなか歯がゆい思いをしました。
あと、ジャッキーチェンは日本人ではないですね、
これはしっかりと伝わったようです。

自然災害のこと。
これは冗談みたいに言ったらいかんと思いますよね。
ここは露骨に笑ってくるんであれば、本気で怒らねばならないところだと思ったんですけど、幸い、そこまで心無いことは言われなかったので、怒らなくてすみました。

家が小さいってどれくらい小さいと思ってんのかなあと聞くと、もう一般的日本人の家は8畳くらいしかないことになってる。
アパートじゃなくて、一戸建てで。
すげー狭いところに肩寄せ合って生きてて、大変だよなぁと同情されました。
そんなことはないと、一般的な一戸建てはもっと広いし、2階建ての家も多いから、君達が思ってるよりもだいぶ広いよ、と説明してもなかなか納得しません。 
先入観というのは手強い相手です。
そもそもブラジルの家、平均的な大きさは日本のそれと比べてそんなに大きいとは思いません。
庭の面積を含めず、家そのものだけで比べたら日本と変わらないんじゃないの?いや、下手したら日本の方が大きいんじゃない?と思ったりもします。
庭だってみんなが持ってるわけじゃありませんしね。
しかし、この家が小さいというイメージは国土が狭いというイメージとセットになってるものなんですね。
とにかく日本の国土は狭くて、それなのに人口は多い。その結果、人々は小さい家しか持てず、窮屈に暮らしている、という理屈なわけです。
確かに国土に比して人口は多いのかもしれないなぁと思いつつ、だからと言ってそんなに小さい家しか持てないわけじゃないんだということは説明させていただきました。


※次回に続きます