旅夜話

とある好奇心の航跡

ブラジルにて

今ブラジルに来てるんですよ。
もう来てから半年くらい経ちますけどね。
うろちょろ旅してるんです。
ブラジルに来るのは2回目。

日本の皆さんはブラジルに対してどんなイメージありますかね?
カーニバル。サッカー。人々陽気。治安悪い。
そんなところでしょうか。

ブラジルは地球の裏側。
距離的には最も遠い国の一つですから、普段意識することはないでしょうし、あまりよく知りませんよね。
僕も実際に訪れているとは言え、ただの旅行者ですからよくは知りません。
大きな国ですし、何年も住んだり、全域を巡ったりしないと、文化の深いところや全体像はなかなか掴めないでしょう。
ですから信用度の高いことはなかなか言えないんですが、せっかく旅してるので、僕なりにこの国に対する印象を綴っていきたいと思います。

例えば、先程のイメージで言うと…
サッカー。
これね、実はみんながサッカー好きなわけじゃない。
そんなの言われなくても分かるわって声が聞こえてきそうですが、構わず続けます。
サッカーに興味ない人けっこういます。
熱狂的なサッカーファンが思ったより少ないなって印象ですね。
まあ、地域によってだいぶ違いはありそうですけど。少なくとも全ての地域でサッカーに対して熱があるわけではなくて、あんま興味ない人間が多い街も沢山あるんだなって思いました。

あとね、サッカーそこそこ好きな人と話しますよね。
それで、話のつかみで、“ブラジルの選手知ってるぜ、ネイマールすげ〜よな!”と言っても、あまり喜ばれない確率が高い。
ブラジル代表の10番だし、バルセロナで活躍しているし、国民的英雄なんでしょ?、老若男女から愛されてるんでしょ?って思ってたんだけど、どうもそんな感じじゃないんです。
なんか、素行が悪いのか、生意気だと思われてるのか分からないけど、ネイマール好きってヤツに会ったことがない。
いや、もちろんネイマールファンがいないはずはないし、僕が会ったこと無いだけなんだとは思うけど、これだけ出くわさないってことは、その絶対数が知名度の割にだいぶ少ないのかなぁと思いましたね。
ちなみに、ジーコとかペレの名前出すと、ウケが良かったです。これは若い人と話しててもね、そうなんです。やっぱあれだけ大御所になると、悪く言う人はいないですし、みんなから愛されてるなぁって感じました。
そういう意味で言うとネイマール、まだまだ若くて、国民みんなから認められるようになるには早すぎるってことなのかもしれないですね。

そしてカーニバル。
これ、僕が滞在してた街でもやってましたけど、(カーニバルをやっているのはリオデジャネイロだけではない)僕が仲良くなった家族は見に行ってませんでした。
なんで?って聞くと、あんま興味無いし、人がいっぱいいるから嫌だと。三人姉妹で三人とも嫌いだと。
え!?って思いました。そんなブラジル人もいるの?って。
でも他にも、同じような理由でカーニバル行かない若者に何人か会いました。
とすると、これも考えてみれば当たり前なわけですが、ブラジル人とはいえ、みんながみんな、ノリノリでサンバに合わせて踊ったり、それを見て盛り上がったりしないってことなんですね。
中にはそういうノリが苦手な人もけっこういるんです。
もちろんカーニバル大好きな人が沢山いるのは間違いないですけど。

で、人々が陽気の件。
これは大体イメージ通りでしたね。
陰気な人や、堅物みたいな人も、いないわけじゃないけど、すごく少ないと思います。
一般的に、日本人と比べると誰とでも気軽に挨拶するし、初対面でも物怖じしない印象です。
全然知らないおじさんと道端ですれ違っても、目が合ったらにこやかに挨拶されたりします。
これはよくあることです。
所得格差が激しく、月収で1万円とか2万円くらいで生活してる人が沢山いる中で、
物価は日本とあまり変わらないくらいですから、金銭的苦労を感じている人はかなりいると思うんですが、社会の雰囲気からはそんなに悲壮感を感じないです。
ゴミ箱とか道に落ちてる空き缶集めて、それをリサイクル業者に売って生計立ててる家族とか時々見かけるんですが、多分、収入はかなり低いと思うんですよね。
この国でも収入が最も低い部類に入ると予想します。
それでも、家族で陽気に喋りながら、和気あいあい、楽しそうに缶集めてます。
家族が幸せの源なんですね。
うん、家族愛は非常に強いと思います。
家族、親戚といった血縁関係の繋がりが強くて、何かっていうと週末に集まって一緒に飯食ってます。
子供もパパママ大好きで、思春期でも親と距離取ったりしないんじゃないですかね。なんだか反抗期無さそうです。

治安はね~、悪いでしょうね。
田舎の村のお祭りに行った時の話ですけど、そこで発砲事件があって、撃たれた方は亡くなってしまいました。
原因は恋のもつれ。
若い男同士で一人の女を巡って揉めたあげく、恋に破れた方が腹いせに撃ってしまったようです。
都会の危険なエリアでは銃犯罪が多発してるってのは知ってましたけど、のどかな田舎であっても、銃犯罪は日本では考えられないくらい身近にあるようです。それだけ銃が手に入りやすいってことだと思います。 
今滞在している街はそんなに大きな街ではなく、比較的治安が良いと言われてるみたいですが、既に今年に入ってから銃犯罪による死者が20人程出たと聞きました。 
銀行強盗も起きてます。その様子は防犯カメラに捉えられ、ニュース番組で放送されたのを僕も見ました。
閉店後の銀行に覆面をした男数人が侵入。
各ATMを爆破し、中の金を奪っていくという、大胆かつ、あっと言う間の犯行でした。
結局、後日全員捕まったようですが。

更に、どうも全国的に警官の待遇が悪いらしく、時々ストライキが起こります。
これだけ治安が悪い中での警官のストライキですから、結果は火を見るよりかも明らかですね。
犯罪が多発します。 
ストライキが行われるとなると、あらかじめ危険を察知して、ほとんどの店は営業しないのですが、その閉められたシャッターをこじ開け、中の商品を略奪していく人がたくさんいます。
略奪だけではなく、銃犯罪も当然のように増えます。
今年の1月くらいにエスピリトサント州の州都で起きたストライキの際には、10日間程で100人以上の殺人事件が起きました。 

こんな感じで、比較的治安の良いと言われている街でさえ、日本に比べるとはるかに暴力犯罪が身近にあるわけなんですが、それでも普段街中(スラムなど、非常に危険なエリアを除いて)を歩いていて、殺伐とした空気を感じることはほとんどありません。なんとなく、暴力沙汰に巻き込まれる可能性をあまり感じないのです。
むしろ、日本の繁華街のほうがその可能性を感じる機会が多い気がします。
それはどうしてかと言うと、僕がバカだから… ではなく、まあそれもあるかもしれませんが、基本的にブラジル人の方が日本人よりおおらかな感じがするからだと思います。
例えば日本だと、下手したら肩が当たったくらいで舌打ちされたり、因縁つけられたりしますよね?(僕だけじゃないですよね?)つまり、日本はちょっとのことでイライラする人が多い。気がする…。
ブラジルではさすがに肩が当たったくらいで文句言われたりすることは想像しにくいです。
ですから、繁華街を歩いていて、異様に怒りの沸点が低い人に出くわし、不本意ながらその人の怒りスイッチを押してしまう、なんて可能性は日本の方がはるかに高いと感じます。
ただ、繰り返すようですが、何らかの犯罪に巻き込まれる可能性で言ったら、実際ははるかにブラジルの方が高いですよ。
そこは間違いないです。
しかもそれは死に直結しそうな犯罪です。
でもそこだけ知って、街中の雰囲気を想像すると、ちょっと現実と違うのかなぁと思ったんで、日本を引き合いに出してみました。
ある意味ブラジルの怖いところは、普段、街が見せる陽気でのどかな顔とは非常にギャップのある重大な事件が、いとも簡単に起こってしまうところなんだと思います。
予備知識無く、普通にブラジルの地方の街なんか歩いていたら、ほがらかな人ばかりで、こんなところで犯罪なんか起きようもないと感じるでしょう。
ところが、そんなところでも日本では考えられないような頻度で、殺しただの、殺されただのが行われている可能性があるわけです。

なんて怖いことばっかり言ってますが、僕は今のところ怖い目にあったことはありません。
ブラジル人の人懐っこい優しさにすごく助けられています。
次回は、ブラジルにおける日本人の印象を書いていこうと思います。